お茶を点てたことのある人も、無い人も、きっとご存じの茶筅。
“抹茶”をイメージさせる茶道具のひとつです。
とても繊細で、まるで芸術品のような茶筅は、どのように生まれたのでしょうか。
今回は、茶筅の役割や必要性について、見ていきたいと思います。
茶碗に抹茶を入れ、お湯を注ぎ、シャカシャカ。
この、シャカシャカするための道具を、茶筅(ちゃせん)と言います。
そして茶筅は、茶道において絶対に欠かすことのできない道具です。
茶筅の役割は、粉末のお茶とお湯を均一に混ぜること。
一見すると和製泡立て器のようにも見えますが、茶筅は泡立てるための物ではなく、混ぜるためのもの。お茶を点てることにより抹茶は泡立ちますが、しっかりと混ぜる過程で泡立つのであり、「泡立てよう!」という気持ちで無理に泡立てているのではないことを知っておきましょう。
先ほど、茶筅は絶対に欠かすことのできない道具と書きました。
というのも、他に代用ができないのです。
スプーンはもちろんのこと、クリーマーなどを使って混ぜたとしても、茶筅で得られるまろやかな抹茶の味わいは生まれません。
抹茶を点てる際、様々な茶道具を用意するものですが、実は、茶筅以外の道具については、茶道具でなくとも、代用することが可能です。
ただ、茶筅だけは必ず用意すること。
お茶をはじめるなら、まず茶筅から用意するといいですよ。
茶筅が誕生したのは、室町時代の中期。
茶道の創始者である村田珠光が、高山城主の次男・宗砌に依頼して作られたと伝えられています。
見るからに細かく、繊細な作りをしている茶筅は、竹筒を細かく割くことで作られます。割いた穂先を湯で温め、先にいくほど徐々に薄くなるよう削り、曲げ、1本ずつ面取りをし、編み上げる……という工程。穂の数は流派により様々で、16~120本。それら1本1本に、丁寧な細工を施し、完成しているのです。
別々に作られたパーツを組み合わせる……などではなく、割き、削り、曲げるという手仕事で作られる茶筅は、まさに芸術とも言える逸品です。
素晴らしい技術あればこその道具なのです。
“ちゃせん”を変換すると、茶筅と茶筌、ふたつの表記が出てきます。
これは、どちらも“ちゃせん“であり、正しい表記。
ただ、茶筌という文字は高山とセットとなり、『高山茶筌』として用いられることの多い表記となっています。
これは、茶筌の発案者である、高山城主の次男・宗砌にちなみます。
宗砌が発案した茶筌の製造技術は、長きに渡り”一子相伝”として、ただ一人にだけ代々引き継がれてきました。(現在は、多くの人が継承しています)
それにより、その貴重さと技術力の高さが相まって、奈良県生駒郡高山町で作られる茶筌を『高山茶筌』、それ以外を茶筅と呼ぶようになったと言われています。
茶筅は、消耗品です。使っていくうちに穂先が折れたり、しぼんでしまったり。
こうなると、きれいに点てることができなくなってしまいますから、買い換えなければなりません。
選び方としては、点てるお茶が何なのかで変わります。
例えば、濃茶であれば、穂先が少なく太い作りの茶筅となり、薄茶であればクリーミーに仕上がる穂先の多い細かな茶筅でなくてはなりません。
また、流派による違いもあります。
特に縛りなく個人的に楽しみたい場合には、100本立てが使いやすく、おすすめです。
100本立てとは、“穂先が100本ある”ということに由来していますが、正直なところ、「そのくらい多いよ」ということであり、本当に100本あるわけではありません。
よく似た形状ではありますが、細かな部分で違いのある茶筅。
ほれ込んだひとつを手に取ってみるという選び方でも構いません。
日々の生活に、シャカシャカという軽やかな音と共に、お茶を点てるというひとときを取り入れてみませんか。