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お茶の豆知識

  • 2024.04.01
  • お茶の種類

三献茶という、もうひとつのおもてなし

「お茶をたしなむ」と言うと、すぐに想像されるのが茶道かと思います。
裏千家や表千家、武者小路千家などのお茶の流派をご存じの方もきっと多いことでしょう。
では、もうひとつ。
『三献茶』というお茶のおもてなしをご存じでしょうか。

三献茶とは

かの豊臣秀吉が、まだ近江長浜城主だった頃のお話。
鷹狩りの途中、とある寺を訪れ、茶を所望します。
すると少年が、大きな茶碗にぬるめの茶を入れ、差し出します。
喉がとても乾いていた秀吉は、それを一気に飲み干し、もう一服所望。
少年は、先ほどより少し小さめの茶碗に、やや熱めのお茶を入れ、差し出します。
秀吉はそれも飲み干し、もう一服と少年に命じます。
三杯目として少年が持ってきた茶は、高価で小さな茶碗に入ったほんの少量の熱い茶で、それを秀吉はゆっくりと味わい、楽しむことができた。
という話が、言い伝えられています。

この逸話こそが『三献茶』。
そして、この提供方法を考えた少年とは、後の石田三成。
心配りの妙から少年の才気を見抜き、26歳となった時、奉行に抜擢されます。その後は秀吉政権を支え、最高幹部にまで上り詰めることに。
ゴクゴクと飲みたいであろう気持ちを慮り、ぬるめのお茶をたっぷりと。
そして徐々に、お茶を味わい楽しめるように計らっていく。
おもてなしの精神が掴み取った栄華であると言えるのです。

三献茶から見る健康

「おもてなしの心」とも言える三献茶。実は、「健康」という観点からも、オススメな飲み方であることが分かりました。
というのも、お茶は温度で成分が大きく変わる飲み物だから。
では、三献茶に沿って、その成分の変化を見ていきましょう。

ぬるめのお茶について
人が「ぬるい」と感じるのは、およそ40度以下と考えられます。この温度ではカテキンやカフェインがあまり抽出されず、テアニンが多く抽出されるお茶となります。
テアニンにはリラックス作用があるため、疲れた体を癒し、心安らぐ効果が期待できるわけです。

やや熱めのお茶について
「やや熱い」と感じるのは、50~60度くらいだと思われます。これくらいの温度になると、カテキンが多く抽出されるようになるわけですが、カテキンの作用として期待できるのが、活性酸素に働きかけることによる疲労回復効果。
ぬるめのお茶で心安らいだ状態での疲労回復ということで、その効果は期待できますよね。

とても熱いお茶について
「とても熱い」とされるのは、80度を超えるお茶。ここまで熱くなると、カフェインが最大限に抽出されたお茶となります。
カフェインには覚醒作用があり、取り入れることで頭がスッキリする感覚が得られます。

心を癒し、疲労を回復した後にリフレッシュ。これはもう、完璧な疲れへの対処方法と言えると思います。
もちろん、石田三成が「健康への効能」についてまで見透かしていたわけではありません。しかし結果として、石田三成のおもてなしの心には深い意味まであったのですから、とてもすごい事だと今さらながらに感心させられてしまいます。

お茶を楽しむ心を

少年時代の石田三成の手元にあったのは、たったひとつのお茶でした。
その、たったひとつのお茶を活用し、3種類のお茶を献上したことにより、秀吉から評価されることとなったわけです。
相手の心情を読み取ってお茶を楽しむところに、『本当のおもてなし』があるのかもしれません。

 

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