屋外で抹茶を点て、楽しむことを、「野点(のだて)」と言います。
野点を体験した方からよく聞かれるのが、「同じ抹茶なのに、茶室でいただく抹茶と野点でいただく抹茶では、こうも違ってびっくり!」というお声。
驚かれる人が多くおられるのです。
本日は、そんな野点についてご案内したいと思います。
コロナ禍を経験したことで、人々は、アウトドアな楽しみに再注目することとなりました。
「密を回避しながら、どう楽しく過ごせるか」
「ひとりでも充実の時間を過ごす方法とは」
などを考え、行き着いた先に、ソロキャンプやガーデニング、DIYがあったのでしょう。
そして、今。
コロナ前の日常を取り戻しながらも、アウトドアを楽しむ層が大きく減ることはなく、趣味としてしっかりと根付いた印象です。
自然と向き合うことや、自分自身と向き合うことの大切さと楽しさを知ったことにより、流行りでは終わらなかったわけです。
そんな“今”だからこそ、広く「野点」を伝えたい!!
野点の面白さは、お茶を点てるための道具一式を、外に持ち出してしまうところにあります。
茶道具は、なかなか種類が多いもの。
それを外でというのは、本来なら意外な組み合わせ。
もちろん、多少簡略化はされます。
しかし、外であるにも関わらず、しっかりとお作法に則ってお茶を点て、頂くのが「野点」。
そのアンマッチ感もすべて含んだ上で楽しむのが、野点の作法だと思うのです。
野点の歴史は古く、戦国時代に遡ります。
遠征の途中に武将が、狩りの傍らで大名が、休憩も兼ねて外でお茶を楽しんだことがはじまりだと言われています。
ただ単に、のどを潤すだけであれば、川で水を汲んで飲めばいいわけで、野点をする必要はありません。
しかし、場を構え、物を用意し、敢えて野点を行ったところに意味があるわけです。
武将や大名が野点に求めたものは、単なるお茶の時間ではなく、心の安寧や内省の時間だったのかもしれません。
そして、日々の喧騒から少し離れて、穏やかな時間を楽しみたいという秘めた思いも含まれているのだろうと思うのです。
現代人も、多忙な日常や溢れる情報に囲まれ、心が疲れてしまう、そんな環境に身を置いている方が少なくないでしょう。
でも、野点をすれば、そのひととき、自然の中で静かに、自分と向き合う時間を作り出すことができます。
風の音や木々のさざめきに耳を傾け、空の色を愛でながら、空気の匂いを感じ、無心でお茶を点てる。
これは、瞑想にも近いもの。
心をリセットするのに、きっと最適な時間となるのではないでしょうか。
野点のお道具とは
野点のお道具についてお話をする前に、まずは、一般的な茶道具一式について見てみましょう。
いかがでしょう。たっぷりとありますよね。
これらを揃え、茶室にて茶会が楽しまれることとなります。
では、野点で用意したい道具を考えます。
おおよそ、この位あれば問題なく野点が楽しめます。
上記を参考に、ひとつひとつ、お気に入りを集めていくのも素敵ですが、最近は「野点セット」として様々な商品が販売されています。
コンパクトで軽い道具が、おしゃれな袋に入ったセットだと、集める手間なく、すぐに野点にチャレンジできるのが嬉しいですよね。
ご自身のペースで時間を過ごし、自然の中で時の流れを満喫することのできるソロキャンプ。
湖畔や山の中など、静かな一角に場所を構え、風や光、自然の音を感じながら自分だけの茶席を作り上げる野点は、自然との一体感がより強く感じられるものであり、大変相性の良いものだと言えます。
一方で、複数人での野点も、皆で四季の移ろいを感じながら、開放感あふれる素敵なイベントとなります。
和やかな雰囲気を作り出せるため繋がりが深まり、心の距離も縮まっていくかもしれません。
戦国の世で、野点が心の安寧や内省の時間となったように、現代においても、忙しさで見落としてしまいがちな事に目を向け、心のゆとりを取り戻す手段になることと思います。
もちろん、自然の中で頂くお茶の味も格別です。
皆様の生活に、野点を役立ててもらえたなら嬉しいです。